世界のウイスキー
およそ700種類に及ぶ世界中から集められたウイスキーのテイスティングノートや情報はこちらからご覧いただけます。現在は多くのテイスティングコメントを皆様にお届けするために、バッチ(製造年)違いである同一商品のテイスティングも掲載しておりますので、現在発売されているウイスキーの評価とは限りません。予めご了承ください。
テイスティングWhisky Magazine ではウイスキー専門家、作家、愛飲家によるテイスティングを毎号開催し、その情報を皆さんにお届けしています。
推奨ボトルテイスターが判定したポイントの規定によってSilver Recommended(銀賞)もしくは Gold Editors Choice(金賞)が毎号決定します。
エライジャ・クレイグ バレルプルーフ バッチA121 61.8%
- 蒸溜所名: ヘヴン・ヒル蒸溜所
- 地域: ケンタッキー
- ブランド: ヘヴン・ヒル
- 価格帯: £26-70
- 入手可能場所: コアレンジ
- 掲載号:178号
クリストファー・コーツSCORE8.0
- 香り
- ブラックチェリー、ダムソンのジャム、甘いバルサミコ、杉や沈香のアロマ。乾燥オレンジ、シナモン、クローブなどの濃厚な香料が入ったクリスマスキャンドル。
- 味
- 口当たりはミディアムボディ。高いアルコール度数のわりには、そんなに強い刺激がない。甘い紅茶、さらに増したオレンジの風味、どこかグリューワインのような香味要素。リンゴンベリー(コケモモ)のジャム、ブラックチェリー、ブラックベリー。
- フィニッシュ
- 余韻の長さはミディアムから短め。穏やかに霧散して、オレンジとクローブの後味を残す。
- コメント
- 味わい深いウイスキーだが、風味が消え去るまでの時間がやや短い。
エライジャ・クレイグ バレルプルーフ バッチC920 66.4%
- 蒸溜所名: ヘヴン・ヒル蒸溜所
- 地域: ケンタッキー
- ブランド: ヘヴン・ヒル
- 価格帯: £71-120
- 入手可能場所: コアレンジ
- 掲載号:174号
フィービー・カルバーSCORE8.2
- 香り
- 最初に感じるのはマニキュア除光液。それをすぐに押し止めるのは、バニラ味のスポンジキャンディー、ココナッツ味のマカロン、ダークチョコレート。やがてフレッシュなモモ、マラスキーノチェリーシロップ、ゴム、インクなどの匂いもする。
- 味
- 甘くシロップのような風味。再びマラスキーノシロップの味も感じるが、リッチで酸味のある黒っぽい果皮のベリージャムも想起させる。クローブのスパイス、甘いシナモン、バニラクリームなどの味。オレンジの皮と生のパン生地。
- フィニッシュ
- 余韻は長く、甘い後味。シナモンのスパイスを感じさせる。
- コメント
- とてもバランスが良いウイスキー。水を加えると、さらにその風味が楽しめる。
クリストファー・コーツSCORE8.2
- 香り
- スピリッツの特性が前面に出た香り。最初はアセトンの匂いが漂うが、グラスに注ぐとすぐ完全に消え失せる。その後から、黒パン、濃厚なシナモン、クローブ、砂糖漬けのチェリーの匂いが波のように押し寄せる。バーク堆肥のような土っぽい匂いがあり、ミルクチョコレート、コンデンスミルク、クリームっぽいココナッツも感じさせる。クリーム入りスナックとかすかなエスプレッソコーヒーの匂い。わずかにゴムっぽい印象(不快ではない)があり、ちょっとプラムワインも感じさせる。
- 味
- 力強い味わいだが、ひとつの風味が突出せずにバランスよく統合されている。紅茶のようなタンニンが序盤から顕在化している。カシスのコーディアルや、かすかに酸っぱいラズベリージャム。ベルガモットとクローブの感触。甘いティーケーキの特徴や、柑橘類の皮のような風味もわずかに感じる。
- フィニッシュ
- 余韻は長く、唾液を誘うような印象。
- コメント
- クリスマスの季節に、庭の中央にあるテーブルへコーヒーとケーキを取りに行くような趣き。香りは非常に複雑な仕上がりだが、味覚は同じ複雑さのレベルに達していない。
エライジャ・クレイグ バレルプルーフ ストレートバーボン 63.6%
- 蒸溜所名: ヘヴン・ヒル蒸溜所
- 地域: ケンタッキー
- ブランド: ヘヴン・ヒル
- 価格帯: £181〜
- 入手可能場所: 全世界
- 掲載号:168号
ロブ・アランソンSCORE9.4
- 香り
- 最初にアルコールの一撃があるものの、やがて香りは落ち着いて、シナモン、クローブ、ロースト唐辛子などの力強いスパイスを放った後で、爽やかなオーク香に行き着く。時間が経つにつれて、アップルパイやカスタードの匂いもしてくる。かすかなキャラメルとチョコレートソースも感じさせる。
- 味
- チョコレートでコーティングしたピーナッツとレーズン。乾燥ココナッツ、ゴールデンシロップ、ターメリック漬けのオーツ麦。焼いたメープルシロップや、ベーコンのような肉っぽい味わいもかすかにある。バニラ風味をまとったコーヒーの粉。
- フィニッシュ
- 盛大にフルーティーな後味が、レモンのような刺激と共に立ち上がる。スパイス香が流れ込んできて、しばらく滞まりながらゆっくりと消え失せてゆく。
- コメント
- ゆっくりと時間をかけて楽しみたいバーボン。馬たちが駆ける平原、どこまでも続く青い芝、白いフェンスなどの情景を思い浮かべながら。
ベッキー・パスキンSCORE8.5
- 香り
- ダークラムを思わせるような香り。ねっとりとしたレーズン、乾燥ベリー、ペストリーのスパイスなどがたっぷりと積まれているような印象。糖蜜のトフィーとメープルシロップを、蒸したバニラ味のスポンジプディングにたっぷりとかけたような匂い。
- 味
- 分厚くねっとりとしたリッチな口当たりで、 モラス(糖蜜酒)、糖蜜、シナモン、ダークチョコレートなどの風味を想起させる。ストレートで飲むとかなり刺激が強い。水を入れると、乾燥モレローチェリー、ブラックベリー、カシスのようなフルーツ風味で唾液を誘う。
- フィニッシュ
- ダークな甘みを感じさせる後味。ふんだんなスパイスの余韻。
- コメント
- バーボン界のモンスター的な味わい。フレーバーのスペクトラムでいえば、黒い果皮のフルーツを代表とするダークな味わいを指向している。
エライジャ・クレイグ バレルプルーフ 68.4%
- 蒸溜所名: ヘヴン・ヒル蒸溜所
- 地域: ケンタッキー
- ブランド: ヘヴン・ヒル
- 価格帯: £71-120
- 入手可能場所: 全世界
- 掲載号:164号
ロブ・アランソンSCORE9.1
- 香り
- 高いアルコール度数のバーボンにしては軽快な香り。パルマバイオレットのように穏やかでフローラルな匂い。シンプルなシロップに漬けたチェリー。マジパンとミルクチョコレート。やがてアップルパイの香りがたっぷりと感じられるようになる。
- 味
- 加水しないと、とにかくアルコールの刺激がヒリヒリと熱い。アルコール度数の高さが原因だ。チューインガムに唐辛子を入れたような辛味と甘味。加水するとそれが和らぎ、チェリーのような風味やクリーミーな甘味を感じる。ジャスミンの花。スパイスも感じるが、やや後退してゴージャスなトフィー風味を感じさせる。バニラシュガー。
- フィニッシュ
- 余韻は長く、トフィーやオーク由来のクリーミーな風味にあふれている。
- コメント
- アルコールの背後に隠れているフレーバーを引き出すには、少々の加水が必要だ。水を入れれば、ウイスキーが輝き始める。ゴージャスな味わい。
リンジー・グレイSCORE8.6
- 香り
- そば粉で作った温かいパンケーキ、カリカリのベーコンとスイートコーン。チョコレートでコーティングしたバナナとレモンカードの香りもある。極めてシャープで甘い匂い。カシスヨーグルトと「アイアンブルー」(スコットランドの清涼飲料水)の味がするタブレット。
- 味
- レモンシャーベットに浸したラズベリー。やがて黒い糖蜜に漬けたラズベリーと、熱々のジンジャーブレッドのかけら。メンソール風味が元祖ストレプシル(のど飴)を思わせ、咳止めシロップのねっとりと濃厚な舌触りも感じさせる。
- フィニッシュ
- リッチで濃密な糖蜜の後味が一貫して続く。そこには砂糖煮したプルーンのような余韻も加わっている。
- コメント
- この風邪薬のようなウイスキーを飲むために、風邪を引いてみてもいいとさえ思える見事な出来映え。
エライジャ・クレイグ バレルプルーフ 65.7%
- 蒸溜所名: ヘブン・ヒル蒸溜所
- 地域: ケンタッキー
- ブランド: ヘブン・ヒル
- 価格帯: £71-120
- 入手可能場所: 全世界
- 掲載号:156号
ロブ・アランソンSCORE8.9
- 香り
- 最初に感じるのは、埃っぽい放熱器からの熱風。スパイシーで、少し金属っぽい感触(ただし心地よい)もあって魅惑的な香り。さらに温かいバターコーンブレッドと青唐辛子のスパイスも分け入ってくる。マラスキーノチェリーとハニーシロップ。花のような香水の匂いが充満する。
- 味
- 堂々と押し出しの強い風味。香りで感じたすべてのスパイスが、甘味を突き抜けてパンチを放つ。頬を引きつらせるようなオーク材のタンニンがあり、かすかな塩クラッカーの刺激がゆっくりと霧散する。ピーナッツバターに、ココナッツミルクとチリペースト。
- フィニッシュ
- すべてのスパイスとかすかなオーク香を伴って、ドライに霧散する後味。
- コメント
- ゆっくりと味わうのにぴったり。香水のように芳り高いウイスキー。
リンジー・グレイSCORE9.2
- 香り
- パイナップル、マシュマロ、バターを塗ったトウモロコシなどを直火で焼いている匂い。グリーンシャルトリューズと塩ピーナッツの香りが弾けて、甘みの向こうから垣間見える。
- 味
- 塩ピーナッツ、バーベキューで焼いたコーン、焦がしたオーク材、甘いパイナップルと熟れたルバーブを入れたヌテラミルクなどの風味が爆発する。水を加えると、アスパラガスと松の実が入った焼きそばのような味わいが底流していることに気づく。
- フィニッシュ
- バターっぽい風味にドライな舌触り。塩気も感じさせる後味。
- コメント
- ピーナッツバターとダークチョコレートのブラウニーケーキ。これぞ背徳の喜び。
エライジャ・クレイグ バレルプルーフバーボン C917 65.0%
- 蒸溜所名: ヘヴン・ヒル蒸溜所
- 地域: ケンタッキー
- ブランド: ヘヴン・ヒル
- 価格帯: 26-70
- 入手可能場所: 全世界
- 掲載号:149号
マーク・ニュートンSCORE7.5
- 香り
- 高いアルコール度数のわりには、驚くほど親しみやすい香り。だがたくさんのフレーバーが閉じ込められている印象。エルダーベリー、ダークチョコレート、トルコ菓子。旺盛なバニラ香。
- 味
- チェリー風味が支配し、クランベリーソース、ブラックベリー、ラズベリーなどの味もするが、まとわりつく過剰なタンニンによって覆い隠されている。木の影響が強すぎる。加水すると、スペアミントとフェンネルの風味が軛から解放される。
- フィニッシュ
- 余韻は短く、スパイシー。シナモンとクレームブリュレのような後味。
- コメント
- やや退屈で、粗野で、繊細さに欠けながらも、十分に楽しめるウイスキーではある。バーボン界のチャニング・テイタムといった印象。
ロブ・アランソンSCORE8.3
- 香り
- 大胆で押し出しは強いが、鼻腔への刺激は穏やか。ローズウォーター、ダークチョコレート、摘みたてのバニラポッドなどの香りが爆発する。かすかにチェリーパイとカスタードの匂いもある。最後には、摘みたてのボタンの花を思わせる印象が待っている。
- 味
- 香りで感じた要素が、ほぼそのまま味覚でも踏襲される。アルコール度数の高さはさほど感じられない。黒い果皮のフルーツを思わせる風味が豊富。木を由来とするタンニンやバニラの風味もたくさんある。
- フィニッシュ
- これまでに感じたフルーツ香が、すべて詰まったパンチのあるフィニッシュ。かすかなスパイスの痕跡も残す。
- コメント
- 花の香りがするビロードに、鉄拳がくるまれている。
エライジャ・クレイグ バレルプルーフバーボン B517 62.1%
- 蒸溜所名: ヘヴン・ヒル蒸溜所
- 地域: ケンタッキー
- ブランド: ヘヴン・ヒル
- 価格帯: 26-70
- 入手可能場所: 全世界
- 掲載号:148号
マーク・ニュートンSCORE7.9
- 香り
- ラズベリージャム、ふんだんなキャラメルとバニラ。シナモンとナツメグに、ペパーミントの香りが伴う。焼けたようなトースト香もたくさんあり、ライスプディングとコーヒー粉の匂いもする。ベイリーフ。
- 味
- ティラミス、ダークチョコレート、唐辛子、バニラの山。軽やかな風味は、エルダーフラワーのコーディアルのよう。素晴らしくシルキーな舌触りだが、やや木の感触が強すぎる。加水すると紅茶や全粒粉トーストの風味が引き出される。
- フィニッシュ
- 余韻は長く、あたたかい。主張が強く、苦味もあり、クローブから最後はペパーミントに至る。
- コメント
- 力強い味わいだが、やや手を加えすぎた印象もある。
ロブ・アランソンSCORE9.0
- 香り
- 生き生きとしたコーヒー店の匂い。エスプレッソ粉、淹れたてのカプチーノとバニラクリーム。それがプラムのチャツネとベイクドポークに移行する。スチーム暖房のラジエーターを思わせる金属の匂い。埃っぽい老舗の書店や、土のようなダンネージ式の貯蔵庫の印象。
- 味
- コーラキューブと黒い糖蜜。オーク風味がしっかりと強固で、たくさんのタンニンを感じる。後からタバコの灰とバニラ風味が増加する。
- フィニッシュ
- 少しライのスパイスがあり、リッチなクリームを感じさせた後でタンニンを伴いながらドライな感触を残す。ここでも強烈なオークの風味。
- コメント
- 本当に力強いバーボン。アルコール度数にあわせて加水すればいいという訳でもなく、水をほんの数滴入れるだけで風味が花開く。
エライジャ・クレイグ バレルプルーフ バッチナンバー A117 63.5%
- 蒸溜所名: ヘヴン・ヒル蒸溜所
- 地域: ケンタッキー
- ブランド: ヘヴン・ヒル
- 価格帯: 26-70
- 入手可能場所: 全世界
- 掲載号:144号
ローラ・フォスターSCORE8.6
- 香り
- 高いアルコール度数が、かなり鼻腔を刺激する。シャープで酸味を感じさせるタンジェリン、ラズベリー、スターフルーツなどのアロマ。たくさんのスパイス(特にライ麦パンとアニス)があり、やがてペカンパイの匂いが突き抜けてくる。
- 味
- プラスチックのような口当たり。酸味のあるフルーツ風味が、まろやかでトロピカルな採れたてのバナナ風味に道を譲る。はっきりとした棘があり、熱を感じさせ、痺れるようなスパイス攻撃を舌の中央に感じる。酸っぱいガーキンのピクルスがそれを少しなだめて、やがて温かなトフィーソースがバニラアイスクリームの上に振りかけられる。
- フィニッシュ
- 大きなボウルまるごとのバナナカスタード。
- コメント
- 自信満々で、威勢がよく、不遜なほどのウイスキー。水を加えても、なかなか穏やかには落ち着かなかった。
マーク・ニュートンSCORE7.9
- 香り
- 心地よい深みがある香り。モレロチェリーと、それを上回る濃厚さのドライフルーツ(イチジクとプルーン)。やがてブラックベリージャム。松葉の香りが爽やかな活気を感じさせる。
- 味
- ドライでタンニンを感じさせる口当たりだが、アルコール度数を考えるとさほど攻撃的でもない。サワーチェリー、ペパーミント、キャラメル。発酵した肉。エルダーベリーの酸味。加水するとフルーツ風味がはっきりと強調される。
- フィニッシュ
- 余韻は短い。フェンネル、クローブ、そしてまたもやサワーチェリーの香りを伴っている。余韻の短さが惜しまれる。
- コメント
- 複雑さはないが、よくできたバーボン。飲みやすいと表現してもいいが、加水はほんのわずかに留めたほうがいい。
フィービー・カルバーSCORE8.5